2009/02/22 ADCC ASIA TRIAL REPORT
【レポート&写真】Takashima Manabu



2月22日(日)東京・中央区総合スポーツセンター柔道にて、「ADCC世界大会アジア予選」が行われた。


【66s以下級】
本大会と違い、試合時間6分(決勝は10分)で争われた今予選大会。最大27人を集めた66s以下級が、例年通り高次元のサバイバル戦が展開された。

トーナメント開催前から本命視されていたのは、徹肌イ朗、八隅孝平、塩澤正人、戸井田克也の4名。彼ら西林浩平、若林琢磨、村田卓美、犬伏出がどのように絡むかが注目されていた。

結果、西林は準々決勝で徹に横三角絞めで敗れ、若林との再延長レフェリー判定までもつれこんだ耐久戦を勝ち抜いた村田は、準決勝で腹固め+チョークで塩澤の軍門に下った。犬伏は得意の足関節と三角絞めを二回戦で対戦した江尻慎司に凌がれ引き込みマイナスポイントで早々に姿を消し、その犬伏を破った江尻も準々決勝で戸井田に大量ポイントを失い敗退し、結果、本命と見られた四強が準決勝進出を決めた。



激戦を究めたのが、八隅と徹の一戦だった。常にテイクダウンを狙う八隅。アンクルで一本を狙う徹。3分が過ぎ、ポイントが加点される時間帯になっても、互いに譲らす試合は延長戦へ。ポイントを譲らず立ち上がり、時折シングルレッグダイブでポイントを奪いにかかる徹だが、八隅は盤石の態勢で首を奪いにいく。結果、再延長の熱戦をレフェリー判定で勝利した八隅が決勝へ。


もう一つの準決勝は、スタンドへ腹固めへの態勢を作ろうとした塩澤から、トップを奪った戸井田がパスに成功すると、そのままアッサリと一本を奪った。


迎えた決勝戦は、10分の長丁場。独特のスタンスと、間合いを外し自らの距離を作ろうとする戸井田に対し、常に正面からテイクダウンを狙う八隅。何度もシングルレッグから戸井田を倒す八隅だが、ADCCルールは背中をつけて3秒寝技をキープする必要があるため、腹ばいになって倒れる戸井田からポイントを奪うことができない。

一方の戸井田も、試合開始からマイナスポイントだけ認められるとあって、引き込むことができず、一瞬、尻もちをついた状態からリバーサルを仕掛けるが、十分に態勢を作ることができず、テイクダウンの防御で体力を消耗していく。

本戦10分、延長5分間、攻める八隅、守る戸井田という展開が続いたが、再延長でついにダブルレッグ・ダイブでついに戸井田がテイクダウンを奪われる。と、これで精根尽きはてたのか、背中を畳につけて動けなくなる。八隅はそのままパスから、肩固めの態勢にはいると、ついに戸井田がタップ。


70s前後、日本最強グラップラーと言われてきた八隅が、ADCC世界大会に2000年以来、9年年ぶりに日本予選を制し、世界大会に打って出ることとなった。



【77s以下級】
11名参加、事前の予想では大本命・中村K太郎に対し、佐々木信治がどこまで迫ることができるかが焦点と思われた77s以下級。しかし、佐々木は準決勝で下林義尚との差し合いで劣性となり、試合終了直前まで消極的な姿勢もあり、再々延長戦後、思わぬレフェリー裁定により敗北を喫してしまう。

対して中村K太郎は、パス狙いからバックを制し、そのままチョークという得意の展開で連続一本勝ちを収め、下林との決勝戦へ。ジャンピングガードから引き込みガードをとった下林だったが、足が開いた直後にK太郎は左へ回ると見せかけ、そのまま首を固めながら右へ動きバックを制す。そのままチョークでタップを奪ったK太郎がダントツの強さを見せつけ、この階級を制した。



【99s以下級】
中村和裕の参加で話題を集めた99s以下級は、8人参加で世界大会へのチケットが争われた。05年世界大会出場の内藤征弥、07年世界大会出場の小澤が中村のライバルと目されていたが、小澤が初戦の中西良行戦でヒザを負傷し、袈裟固めで一本負けという波乱が起きる。内藤はその中西を三角絞めで下し決勝へ。


一方の中村は、ルール&試合展開に不慣れな様子を見せながらも渡邊直人をヒールで下し、シングル・シングレットで異彩を放つアニマル安西を腕十字で破り、決勝戦進出を決めた。決勝はスタンドの組みに強さを見せる中村に対し、内藤はマイナスポイントを恐れず引き込みから攻めようとする。しかし、中村はハーフからアームロックを狙い、一瞬だがマウントを奪取するなど、寝技でも内藤を圧倒する。


その後、スタンドの展開で内藤の小外刈りを切り返し、テイクダウンを奪った中村。そのままパスから狙った腕十字こそ極め切れなかったが、タイムアップとなり7−マイナス1で大差のポイント勝利となった。世界大会に向け、88s級での出場を望む中村だが、これまで予選優勝者が階級を変えて出場した過去はない――。


【女子60s以下級】
55s以下級がなくなり、60sを境とした二階級になった女子トーナメント。60s以下級には5人が参加、うち3名が世界で表彰台を経験しているという、高レベルの争いとなった。55s以下級世界王者の塩田さやかは、準決勝からの出場となり、ソフィア・マックダレモットをヒザ十字で破り、決勝進出を決める。

もう一方の準決勝は、は藤井恵と端貴代という注目の対戦に。スタンド・レスリングが続いた両者の対戦は、ポイントが入らないまま延長戦へ。藤井は端のダブルレッグを潰すと、一気にマウントを奪い、ブリッジに腕十字を合わせて貫禄の一本勝ちとなった。


決勝の師弟対決は、藤井が盤石の強さを見せつけた。ポイントが加算される30秒前にマウントを奪った藤井、そのまま三角を狙い、塩田のシッティンガードからのリバーサル狙いや、足関節を余裕を持って切り抜けると、スコアレスのまま試合は延長へ。塩田のテイクダウン狙いを潰しトップを奪った藤井。そのままハーフからマウントを狙いつつ、腕十字を仕掛けた彼女が、世界王者を下し、今年の9月に開催されるという世界大会出場を決めた。



【88s以下級】
4人参加と淋しい勝ち抜き戦になった88s以下級は春原幸徳が、2試合連続でヒールフックを極め、世界大会出場の権利を手にした。



【99s超級】
88sと同様に、4人参加となった99s超級。下中隆広と金親幸嗣という決勝になり、一回戦でアームロックを極めて勝利している金親が、この試合も腕十字で勝利。2試合連続一本勝ちで、世界大会出場を決めた。



【女子60s超級】
2名のみの参加となった女子60s超級。平岩仁美が佐藤瑞穂のシングルレッグを、腕を極めるように切り返してトップを奪い、そのままアームロックを極めタップを奪った。


■-66.0kg級
優勝  八隅 孝平(ロータスパラエストラ世田谷)

■-77.0kg級
優勝  中村 K太朗(和術慧舟會東京本部)

■-88.0kg級
優勝  春原 幸徳(ロデオスタイル)

■-99.0kg級
優勝  中村 和裕(吉田道場)

■+99.0kg級
優勝  金親 幸嗣(TEAM TACKLER)

■女子-60.0kg級
優勝  藤井 恵(AACC)

■女子+60.0kg級
優勝  平岩 仁美(AACC)